あの夜、俺は逃げた。
深夜2時。
スマホの画面を見つめながら、返信できなかった。彼女からのメッセージは「今日も何もできなかった。生きてる意味ない気がする」。
(どう返せばいいんだ…)
心臓がぐっと締まるような感覚。息を吸っても、うまく吸えない。返信しなきゃと思うほど、指が動かなくなった。
あれから3ヶ月後、俺は別れを選んだ。
正直に言う。疲れ果てたから。愛情が消えたわけじゃない。でも毎晩の「死にたい」という言葉に、自分のメンタルが限界を超えてた。仕事でも集中できなくて、ミスが増えて、上司に呼び出されたこともあった。(もう無理だ、限界だ)そう思って、別れを切り出した。
…で、その後の方が地獄だった。
その後悔、3パターンに分けて考えてみる
後悔にも種類がある。ごちゃまぜのまま抱えてると、いつまでも整理できない。
「戻りたい」系の後悔。 相手の笑顔を思い出すたびに、胸がじわっと痛くなる。共通の友人から「最近元気になってるよ」と聞いた瞬間、(あの時もっと待っていれば)という声が頭の中でざわっとこだまする。
「もっとできたはず」系の後悔。 うつ病について後から調べて知識がついてくると、逆にきつい。「あの対応は最悪だった」「あそこで怒鳴るんじゃなかった」。知れば知るほど、当時の自分がダメ男に見えてくる(泣)。
「正しかったのかすらわからない」系の後悔。 これが一番しんどい。別れた当時は正解だと信じてた。でも時間が経つにつれて揺らいでくる。正解だったのか、逃げだったのか。
俺はこの3つ全部、同時に抱えてた。正直めちゃくちゃだった。
友人の話をする。支えきれなかった男の末路。
30代前半の友人・Kの話。
彼の元カノは、付き合って1年目に重症のうつを発症した。Kは最初、とことん支えようとした。朝起こして、飯作って、病院の付き添いもした。でも半年後、Kは別人みたいになってた。
目の下の隈が消えない。笑わなくなった。俺が飲みに誘っても「行く元気ない」と断り続けた。
別れを選んだあと、Kはしばらく抜け殻みたいだった。罪悪感で眠れない夜が続いたと言う。
「でも正直、別れてから半年で、俺、復活したんだよね」
彼がそう言ったとき、少し目が赤かった。
「彼女も実家に戻って、ちゃんと治療できるようになったって聞いた。俺が傍にいたことで、親に頼れなかったのかもしれない」
…これ、考えたことなかった視点だった。支え手がいると、もっと根本的な助けを求めることを後回しにしてしまうケースがある。別れが、結果として相手の回復を助けることもある。もちろん逆もある。でも「別れ=相手を傷つけた」と単純に括れない。
「相手のために離れる」という言葉の罠
もう一人、別の話をする。
35歳の先輩が、うつ状態の彼女から「あなたに迷惑かけたくない。別れましょう」と言われた。先輩は「彼女の回復を優先してあげたい」という気持ちで、受け入れた。
数ヶ月後、彼女の友人から連絡が来た。
「あの子、捨てられたって思ってる」
先輩の顔がみるみる青ざめた、という話を聞いた。
うつの症状の一つに「自己否定の強化」がある。「自分は迷惑な存在だ」という考えが止まらなくなる状態。その言葉を額面通りに受け取って「そうだね、別れよう」と返してしまうと、相手は「やっぱり自分は要らない存在だった」と受け取ることがある。
(相手の言葉が、症状から来てるのか、本音なのか。それを見極めるのが、まじで難しい)
これが、うつ絡みの別れが普通の別れと全然違う理由。誰も悪くないのに、全員が傷つく。
「当時の俺は最悪だった」は、事実じゃない
後悔の整理で一番やってほしいことがある。
紙に書き出すんだ。感情を。
「別れを考えた日」「実際に別れた日」「後悔し始めた日」。それぞれの自分が、何を感じて、何を望んでいたか。
これ、めんどくさいけど効く。
書いてみると分かる。当時の自分が「どんな状況に置かれていたか」が浮かぶ。仕事のストレス、経済的な不安、自分の睡眠不足、孤立感。相手のサポートだけじゃなく、他にも山ほど問題を抱えてたはず。
その状況で「もっとできたはず」は、ちょっと厳しすぎないか。
当時知らなかったことを、今の知識で責めるのは、フェアじゃない。当時の自分に今の知識はなかった。それだけの話。
再び連絡するべきか問題
「また連絡したい」と考えている人もいるはず。
結論から言う。条件が揃ってないなら、待て。
確認すべきことは三つ。
①相手が今、安定しているか。治療中なのか、回復期なのか。共通の知人がいれば、そっと確認できるかもしれない。SNSで確認するのはアリだが、ストーカー的にならないように。
②自分が感情的にならずに話せる状態か。まだドロドロした罪悪感が残ってるなら、それを全部相手にぶつけることになる。それは相手にとって、負担でしかない。
③「断られたら受け入れられるか」。これが一番大事。「会いたくない」と言われたとき、素直に引けるか。自分の気持ちを優先して押し込んでしまうようなら、まだその時期じゃない。
全部クリアできそうなら、短いメッセージを一通だけ送る。「久しぶりです。一度だけ話せたら」くらいで十分。返事が来なくても、追撃しない。それだけ守れれば、後悔は残らない。
「別れた後悔」を抱えたまま生きてく方法
再接触が無理な状況もある。相手が新しい関係にいる、拒絶された、距離的に現実的じゃない。
そういうとき。
「遠くから幸せを願う」というやつ、なんかドラマっぽくて恥ずかしいんだけど、はぁ…正直これしかない。相手のSNSで元気そうな近況を見て、むずむずした気持ちになりながらも、「ああ、生きてんな」とほっとする。それでいい。
罪悪感が強いときは、「当時やったこと」をリストアップしてみて。支えた日、一緒に病院に行った日、夜中に話を聞いた日。完璧じゃなかったかもしれない。でも0点じゃなかったはず。
感情って、波みたいなもんで。今日ものすごく後悔してても、明日は少し軽くなる。またしんどくなる日もある。でもその波は、ちゃんと引いていく。
最後に、一つだけ
うつ病の人を支えようとした男性は、みんなどこかで無力感を味わってる。どれだけ頑張っても「足りない」「また落ちた」「また連絡が途絶えた」。その繰り返しに消耗していく。
それは愛情が足りなかったんじゃなく、一人では背負いきれない重さだっただけ。
「逃げた」じゃない。「限界だった」。
その違い、ちゃんと自分に言い聞かせてほしい。マジで。
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